甦った幻ホテル
京都に住んでいた私が函館通いを始めた2008年9月以来、
毎月、函館に来るたび宿にしていた某ホテル。
昭和7年、財閥系銀行の函館支店として建てられた
重厚な建物を再利用したホテルだった。
私が函館に小さな部屋を借りた2009年の秋、
それと入れ替えのように、営業をやめてしまった。
その後、新たな引き受け手が現れるでもなく、外装は朽ちる一方、
戦前の価値ある銀行建築も、
何とかしないと手遅れになり、解体の憂き目にあうのではないか。
前を通るたびに不安が頭をかすめる。
そんなことが5年続き、6年続き……
という中で迎えた2016年は北海道新幹線開業の春、
もはや絶望するのみか、という思いで
このとき出版した『来たくなったら自分で探そう』に
「幻ホテル」というタイトルで紹介したのだった。
それが何と、本が世に出てしばらくするうち改修工事が始まって
翌2017年の5月、再びホテルとして、見事、甦ったのだった。
外観はほぼ以前と同じ。だが、内部はまったく様変わりした。
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